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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)74号 判決

一 本件に関する特許庁における手続の経緯及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第三号証の一によれば、原告は、昭和六二年一〇月三一日、商標法五〇条一項に基づき、本件商標の指定商品中「頭飾品、かばん類、化粧用器」についての商標登録の取消しを求める審判の請求をしたことが認められ、本件審決は右審決請求に対する判断である。

二 取消事由に対する判断

1 商標不使用による登録取消審判請求における請求人は、当該不使用商標の取消しにつき利害関係を有することが必要である。

2 そこで、本件において、原告が本件商標の不使用による登録取消審判を請求する利害関係を有するか否かにつき、検討する。

(一) 成立に争いのない甲第二号証、第三号証の六によれば、不使用商標としてその取消しを求められている本件商標の構成は、別紙(一)に表示したとおりであつて、やや図形化された「K」の文字とゴシツク体で表わされた「studio」の文字との組合せよりなり、第二一類「かばん類、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和五〇年一一月二〇日登録出願、同五四年一一月三〇日その登録がなされたものであること(昭和六三年九月一九日確定の昭和六二年審判第一九六七一号事件の審決により右指定商品中「身飾品、ボタン類、宝玉およびその模造品」が取り消され、昭和六三年一一月二八日その旨の登録がなされた。)が認められる。

(二) 成立に争いのない甲第三号証の三によれば、原告は、別紙(二)に表示したとおり「スタジオ-V」及び「Studio-V」の文字を上下二段に書してなる商標を、第二一類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、昭和五〇年一二月二日に登録出願(昭和五〇年商標登録願第一三九九三四号)したことが認められるところ、右商標登録出願が拒絶査定を受け、これに対する審判請求が昭和五五年審判第六九五一号事件として係属していたが、昭和五八年一〇月一四日、右事件について請求不成立の前審決がなされ、同五八年一一月一四日にこれが確定していることについては当事者間に争いがない。

そして、成立に争いのない甲第八号証によれば、前審決は、「原告の出願に係る前記昭和五〇年商標登録願第一三九九三四号の商標は本件商標と類似の商標であつて、指定商品を同じくするものである」との理由から、商標法四条一項一一号に基づく拒絶査定を正当として、請求不成立の判断をしたものであることが認められる。

(三) 成立に争いのない甲第四号証によれば、原告は、本件商標の登録取消審判請求に先立つ昭和六二年一〇月二〇日、前審決により本件商標に類似し指定商品を同じくすると判断された昭和五〇年商標登録願第一三九九三四号の商標と構成及び指定商品を全く同じくする商標について登録出願(昭和六二年商標登録願第一一八二〇六号)をなし、現在、右出願は特許庁に係属中であることが認められる。

以上の事実によれば、原告は、本件商標が登録されているためにその出願に係る昭和六二年商標登録願第一一八二〇六号の商標の登録出願が拒絶されるおそれがあるから、本件商標の不使用を理由に登録取消しを求める法律上の利益を有するというべきである。

3 してみると、本件審決が、原告が本件審判の請求をするについて法律上の利害関係を有するものとは認められないとした判断は誤りで、違法といわざるを得ない。

なお、被告は、原告が審判請求の法律上の利益を基礎付ける事実を簡単に指摘、主張、立証できるにも拘らずこれをなさなかつた場合には特許庁には審判請求の利益について職権調査すべき義務はなく、本件審決は適法である旨主張するが、特許庁における審判手続は職権主義の支配するところであり、特に、審判請求についての利益の問題は国家制度としての審判制度を利用すること自体の可否にかかわる公益的な事項であるから、審判段階において当事者がその判断の基礎となる事実を主張、立証しなかつたからといつてこれによつて弁論主義または処分権主義による制限を受けるものではなく、本件口頭弁論終結時において原告の本件審判の請求をするについての法律上の利害関係を有することが認められる以上、本件審決は違法なものとして取り消さざるを得ない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容する。

〔編注〕本件における特許庁における手続の経緯及び商標の理由の要点は左のとおりである。

一 被告は、登録第一三九八七八六号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、原告は、昭和六二年一〇月三一日、その登録取消審判を請求した。特許庁は、右請求を昭和六二年審判第一九六七〇号事件として審理した結果、平成元年二月九日、審判請求却下の審決(以下「本件審決」という。)をなし、その謄本は、同年三月一五日原告に送達された。

二 本件審決理由の要点

商標法五〇条に規定する商標登録の取消しの審判を請求し得る者は、利害関係人であることを要するものと解されるところ、本件審理に関し、職権をもつて調査するに、請求人が利害関係を有する根拠とした商標登録出願(昭和五〇年商標登録願第一三九九三四号)が拒絶査定を受け、これに対する審判請求が昭和五五年審判第六九五一号事件として係属していたが、昭和五八年八月五日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決がなされ、同五八年一一月一四日にこれが確定していることを確認し得た。

してみれば、請求人は当該出願に係る商標が拒絶確定しているにも拘わらず本件商標の登録の取消しを請求したものであり、この請求は利害関係を有しない者によつてなされた不適法なものと認められるので、これを却下すべきものとする。

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